水を切って、次のポイントにキャスト!
・・・あれっ?
後ろの枝に引っ掛けてしまったようだ。
回収しようと、左右にティペットを引っ張ってみると、プツン!・・・切れてしまった
「あ~あ・・・、2年物フライの最後か(笑)」
なんて呟いていると、そのフライはティペットの切れた衝撃で枝から外れたらしく、フワフワと下に落っこちてきた。
そして2年フライは再びフライパッチの中へ戻って行った。
次の釣行時・・・
今日は、前回と打って変わって何を投げても反応しない!
そろそろお昼時だと言うのに、未だ釣果無し(T_T)
実績のある大きなプール、私は何故かパッチにある
2年物フライを取り付けた。
「なんか釣れる気がするんだよな・・・」
ゴボッ!!出た!!!
なかなかの良型だ♪スゲーぞ、
2年フライ!
フッ!手応えが無くなった
・・・
・・・
バレタ・・・残念。
しかし、良く出るなぁ
2年フライ。
少々凹みながらラインを回収すると、
ティペットの先にフライが無い!
「あ~あ・・・、今度こそ2年物フライの最後か」
その日は、ボウズのままイブニングの時間に
唯一、良型のヒットがあった先ほどのプールで釣をすることにした。
「おっ!来た~♪」
先ほど掛けた魚には及ばない物の、20cmくらいのヤマメが3匹ほど釣れた。
辺りが暗くなってきたので、これが最後の一投!とキャストすると
ヒット!
良型のイワナが上がってきた。
なんとその口元には、先ほど無くした
2年フライが!?
「へぇ~~、こんなこともあるんだなぁ」(驚)
そして2年フライは再びフライパッチの中へ戻って行った。
次の年の夏の日、再び藪沢を釣行中にふと思った
「・・・まだ、あるんだよなぁ」
フライパッチの中には、まだあの2年、いや
3年フライがある。
もちろんず~っと入れっ放しであれば、あり得ることなのだが、そうではない。
ある時は、岩に引っ掛け無くし(
川伝いに帰ってくる最中に発見!)
又ある時は、水中の枝に引っ掛け(
枝が折れて、流れてきたため回収!)
こんな偶然が幾度も続き、その都度
3年フライはフライパッチへと戻っていく、そう帰巣本能のある生き物のように・・・
そろそろ、記念品として殿堂入りか?なんて思ったりもしたのだが、このフライは付けると何故か釣れる!
そんな理由で、いまだにフライパッチに付けている。
「主様、今日もよろしくね(笑)」ついに私はこの
3年フライに
『フライパッチの主』の称号を与えて、常にど真ん中にデ~ン!と居座らせているのだ(;^^A
この日の釣行はギラギラと照りつける太陽に、魚が底に沈んでしまっているのか、反応があまり良くない。
巻き返しなどにしばら~く放っておくと、面倒臭そうにたまに顔を見せる程度・・・
「そろそろ出番かな?」
そう思い、パッチから3年フライを取り出しティペットに結ぶ。
バシャ!
出た!!
このフライにはもはや神通力が宿っているんだろう。
散々苦労していたこの状況で、一発で魚を引き摺り出してしまった(;^^A
次のポイント、暑さで頭がボーっとしていたのかもしれない。
藪の多いポイントであるにも関わらず、
3年フライを付けたままキャストをしてしまった。
(
大切なフライなんで、開けたポイントで1匹釣ったら、仕舞うことにしていたんです。)
「あぁ、取り替えなきゃな」
と思ったがすでに時は遅し・・・ティペットの先には何も付いていない。
「しまった!藪に引っ掛けたか!?」この時は、まだそれ程慌ててはいなかった。
なんせ、こんな状況が何度あっても必ず戻ってくるフライだったんだから・・・
周囲の木の枝、岩、草などを、よく探してみるが見付からない。
「な~に♪帰りにもう一度探せば、きっと見付かるさ!!」
気を取り直して、釣り上り再開。
しかし、やはり気になる・・・反応が悪かった事もあり、釣りをしながらも
3年フライの行方のことが頭から離れない。
おかげで、たまにあるバイトに反応出来ず取り逃がすことも・・・
「ダメだ!集中できない。よし、もう戻って探そう!」
元の場所に戻って、もう一度引っかかりそうな場所を探してみる・・・
無い
ひょっとしたら水中の石に掛かっているかも?・・・
無い
高い木に引っ掛けたかなぁ、目を凝らして探してみる・・・
無い
いや、見落としがあるはずだ!もう一度最初から探してみよう・・・
やはり無い
「そんなはず無いって!いつも必ず戻ってきたじゃないか!!」
辺りが薄暗くなるまで探しつづけたが、結局見付からなかった・・・
「何であの時、フライを替えなかったんだろう・・・ああ、失敗したぁ!!!!」
しかし、もはやフライを探せるような明るさではない。そろそろ戻らないと、足元すら覚束なくなりそうだ。
残念だが、もう諦めるしかない・・・
「はあぁぁぁ・・・・・」
ロッドを折った時と同じくらいに落ち込んだ。
長年苦楽を共にしてきた相棒を失ってしまったかのようだ・・・
「もうあんなフライには、巡り合うことは無いだろうな。殿堂入りさせておけば良かった」
がっくりと肩を落として帰りの山道をトボトボ歩く私の
背中に、一本のフライがくっついていることに気付いたのは、それから数時間後のことだった・・・(笑)
Kawatombo Ken
今回もフィクションです。
でも、ありそうな話ですよね?
皆さんのフライパッチの中にも、こんなフライがありませんか?
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