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2008年01月30日

幻想・川蜻蛉 第七話「未来フィッシャー”ウラシマン”」前編

長いこと釣を趣味にしていると、時に不思議な事にめぐり合うものだが、今回は極め付けだ!

朝日が眩しくて眼を覚ますと、病院のベッドに寝かされていた・・・
頭がボーっとしていて、自分が今何故ここに居るのか良く判らない・・・
ん?・・・・確か私は釣に行っていたはずだ。
幻想・川蜻蛉 第七話「未来フィッシャー”ウラシマン”」前編
ホームリバーの最上流部の滝で、大物を掛けて・・・写真撮影をしていると、いきなり辺りが暗くなって・・・
それから・・・どうなったんだっけ?
ベッドに横になったまま、自分にあったことを考えていると、ウィーンと病室のドアが開いた。

「あらっ?お目覚めになりましたか。」
看護婦さんだ。しかし、どうも私の記憶の中にある看護婦さんとは少々格好が違うようだが・・・
いや!格好が違うどころの騒ぎではない!!頭から直接アンテナが生えており、しかも腕が・・・金属製!!?
「まさか、君ロボット・・・?」
「え?・・・あぁそうです。ナースロイドTYPE775、ナナコとお呼び下さい。」
「はぁ!?・・・あ、あのぉ・・・」
「何でしょうか?」
「・・・」

ロボットって!?・・・いや違う、ここはどこなのか?・・・私に何があったのか?・・・何から聞いていいものか良く判らない。
「簡単に今の状況をご説明しましょうか?」
「あぁ、頼むよ。何だか混乱しているようだ」
「はい、それでは・・・まず日付ですが、今日は西暦2508年3月16日です。あなたの記憶にある時代から500年経過しています。」
「5、500年!?じゃあ今は500年後の世界だっていうのか!バカな!!」
私がそういった瞬間、ナナコと名乗る看護婦さん?いや看護ロボットは、自分の首をズボっと取り外して見せた。
「ア、アラレちゃんかよ・・・」
呆気に取られている私を尻目に、彼女は説明を始めた。
彼女(?)の話によると、500年後の世界ではとうとうタイムマシンが現実のものになりつつあり、過去への時間移動の実験中に事故が起こったそうだ。
そしてその事故現場に私が倒れており、所持品の免許証などから私が500年前の世界の人間である事が判明し、大騒ぎになった・・・と言うことらしい。
幸いにして相当大規模な事故であったにもかかわらず、私の体の損傷は軽微で未来の医療技術であれば、完全に元の身体に回復する程度のものだったらしいが。

「帰れるんだよね?」一番気になっていることを質問した。当然の事だ!
「それは・・・後日説明があると思います。」
「どういうこと!?まさか、帰れないってことじゃないよな!?」
「落ち着いてください。」
彼女は突然の事に興奮する私の手を握った。機械の手であるにもかかわらず、暖かく気持ちが落ち着いてきた。
「鎮静剤を投与いたしました」(「そう言う事かぁ!」彼女は手が注射器になっているらしい。針は無かったが・・・ハイテクか?)
「時間移動による衝撃で、記憶・精神がまだ不安定なのです。明日にでも政府の方から説明があると思います。」
「政府?政府が俺一人のことで動いてるのか?」
「そういうことですが、詳しい事は・・・」
「あぁ、もう良いよ・・それで、俺はどうすればいいんだ?」
「まずは身体を直す事に専念してください。時間移動とそれに伴う事故は、相当あなたの身体に負担を掛けているはずですから。
必要なものがあったらおっしゃってください、ご用意いたします。」

「・・・判ったけど、取りあえず眠い。起きたらまた来てくれよ。」
「かしこまりました。」
「また眼が覚めたら、今度は1000年後なんてことは無いよな?」
「はい、大丈夫ですよ。」ロボットであるはずの彼女は、何故か嬉しそうに微笑んだ。

次の日から実にあわただしい日々が始まった・・・
政府の職員と、実験の責任者がやって来て、今回の事の説明と謝罪。(それはもう平謝りだった・・・)
そして肝心の過去の世界へ戻る話・・・予想は付いていたが、絶望的らしい。
そもそも、小石一つを10秒後の未来に送ると言う程度が、この世界の技術では精一杯で、何故私が500年もの過去から移動してきたのか、仮説すら建てられない状況ということだ。
ショックのあまり、怒りすらこみ上げてこない。最も怒りに任せて怒鳴り散らした所で、後ろに控えているナナコに鎮静剤を打たれるだけだろうが・・・

そして史上初のタイムトラベラーと言う事で、次々訪れてくる取材陣・・・
もっとも何を聞かれても、大したことは答えられない。せいぜい実験への恨み言を言う程度だ。
500年も建つと言葉も相当変化しているようで、日本語といえど理解が出来ない言い回しも多かった。

そして更に、医者だか研究者だか知れない集団・・・アチコチ身体を調べまわされるのは、正直あまり愉快とは言えなかったが、身体にもしも障害が残っていたらと思うと、大人しくしているしかなかった。

更に更に何より腹が立つことがあった。合う人合う人が全員無表情で目つきが悪い(時代によって顔つきも変わるのか?)、これは仕方が無いにせよ、全員マスクをしているのが気に入らない。
バイ菌扱いかよっ!!!

しかしそんな不愉快な生活だったが、政府の関係者は余程すまないと思ったようで、待遇はかなり良かった。
テレビ、雑誌、などの情報は規制されていたが、それ以外の物は頼めば大抵手に入った。
当然釣道具も・・・と思ったのだが、今の世界では釣をする人は全くいなくなってしまったようで(!)
「博物館に保管してある物を集めますので、少々時間が掛かりますが」
と、ナナコ・・・
「いや、道具はともかく釣りはできるのかい?」
「ええ本来は禁止されているんですが、政府から『なるべく元居た世界と同じような生活をしてもらうように』という通達も出ていますし、大丈夫ですよ」
200年前に成立した、「第103次ラムサール条約」でレジャーによる動植物の殺傷は全面的に禁止となっているようだが、
もはや「釣り」という遊びそのものが消えうせてしまっている今となっては、この条約自体有名無実化しているそうだ。
政府の職員も
「自然保護の観点上、望ましくは無いですが・・・まぁ、あなたが世界でただ一人の釣人ですし、生態調査の名目で特別に許可を申請することにしました。ただ・・・場所は、我々の指定した川のみ、ということで」
だ、そうだ。(相変わらずの目つきの悪さと無表情、付けっ放しのマスクがムカツク!
この世界では、釣り仲間を見つけることは出来そうにもないのが寂しいけれど、取り敢えず釣りが出来ればそれで良いさ!!

それから、一ヶ月。
身体はすっかり回復したものの、次の生活の準備が整っていないようで、病院暮らしが続いていた。
消毒液臭い部屋での生活には、いい加減ウンザリしていたが、来るべき正式な釣りの許可が下りる日を楽しみにしながら、キャスティングの練習、タイイングと、それなりに充実して過ごす事が出来た。
幻想・川蜻蛉 第七話「未来フィッシャー”ウラシマン”」前編
とある日、得意のエルクヘアカディスを巻きながら午後の時間を過ごしていると、ナナコがニコニコしながら部屋にやって来た。
彼女はロボットなのに、いやロボットであることを忘れてしまいそうになるくらい表情豊かなのだ。正直この時代の『人間達』より、よほど人間らしい。
これで「非力でドジ」なら、言うことなしだ!(意味不明)
「準備はいかがですか?」
「あぁ、もう万端整ってるよ。許可さえ出れば明日にでも行きたいんだけどね。」
「では、明日にしましょう。」
「えっ?」ポカンとした顔の私を見て、ニコリと微笑み
「正式に許可が下りました。明日から釣りをしても良いそうです。」
・・・
・・・
「やったぁぁぁ!!!」
私はナナコがロボットであることも忘れて、彼女の手を握りブンブン振り回してお礼を言った。
彼女もまた嬉しそうに笑顔を浮かべて、私の手を握り返してくれたのだった・・・

後編へ続く・・・

Kawatombo Ken


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この記事へのコメント
次回予告!
ついに釣に行ける事になった「私」
しかし、未来の世界の自然には大きな謎があった・・・

次回、幻想 川蜻蛉 第八話「未来フィッシャーウラシマン 後編」

初の前後編の大作!!もはや短編ではないのか!?
ご期待ください。
Posted by Kawatombo KenKawatombo Ken at 2008年01月31日 00:17
後編、どのような展開になるのか楽しみですね~!
それと、500年後の河川環境や渓魚がどうなっている
のか・・・・本当に見てみたいですね~!
Posted by tobitanitobitani at 2008年01月31日 17:13
こんばんは

ウラシマン?聴いた様な聴かないような名前だなー
続編に期待します、どんなお魚?(^ー^)。

千曲川・・・雪の中ですよね・・・きっと(^^;。
では 又。
Posted by type r tata at 2008年01月31日 19:22
こんばんは

引き込まれてしまいましたよ。
釣りで始まった不運な彼が、次回の釣りでどうなるんだろう?!
後編楽しみにしています。
Posted by jbopperjbopper at 2008年01月31日 22:58
こんばんは

待っていました幻想・川蜻蛉シリーズ
今回はまたSFチックなお話ですね
魚も進化しているのでしょうか?
んー続きがとっても気になります^^
Posted by エビフライ番長 at 2008年01月31日 23:13
tobitaniさん、こんばんは!
今回は、チョット社会風刺もある話にしたんですよ(;^^A
本当に500年後、どうなっているものやら・・・

後半をお楽しみに♪


type r tataさん、どうもです!
昔、「未来警察 ウラシマン」ってアニメがあったんですよ・・・(;^^A
元ネタはそこです。

千曲川、予報では2月の後半は、もう暖かくなるようですよ♪
自然渓では「ボ」なんて、当たり前です!
それを恐れていては、前には進めませんよ(^^)b
ぜひ挑戦を!!


jbopperさん、こんばんは!
まぁ、釣人の居ない世界ですからね、爆釣は間違いないでしょう(笑)
でも・・・これ以上は言えません(;^^A

後半は、たぶん1週間後くらいです。
お楽しみに!!
Posted by Kawatombo Ken at 2008年02月01日 00:08
エビフライ番長さん、こんばんは!
SF釣小説、斬新でしょ?(笑)

そうですね、普通では500年くらいでは進化はしないでしょうがね♪
・・・ネタバラシになりそうなんで、控えましょう(;^^A
後半も読んでくださいね!!
Posted by Kawatombo Ken at 2008年02月01日 00:23
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