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2009年10月26日

幻想・川蜻蛉 番外編「隠れ滝の無斑岩魚」前篇

釣を趣味にしていると、時に不思議な体験をする

今年の春に嫁さんをもらったせいで(おかげで)、独身時代のように休みの度に釣りに行く・・・と言う訳には行かなくなってしまった
特に私の師匠とも言える「釣魔栗堂」の店長とは、今シーズンまだ一度も同行できていない
結婚式で嫁さんに「俺と一緒に釣りに行っている様では、結婚生活が上手く行く訳が無い!」と言い放ってしまうような人だ、まぁ嫁さんは冗談だと思っていたようだが(笑)
幻想・川蜻蛉 番外編「隠れ滝の無斑岩魚」前篇
FFのベストシーズンを迎えようとしていた初夏のある日、いつもより早目に会社から帰ると「今日は実家に泊まる、ゴメンネ」と言う嫁から書置きを見付けた
最近ご無沙汰しているし、久々に釣魔栗堂に顔を出してみるかな?と思った直後、突然その店長から電話が掛かってきた
「オイ!台風が近付いてきているぞ!!」
確かに季節外れの台風が発生して、日本に向かっているようだが・・・何のことだろうか?
「あの台風は1週間後に本州を直撃する!そうしたら今シーズンはもう終わりだ!!」
「1週間後って・・・直撃するようなコースじゃないですよ?」
天気予報の話だと、石垣島辺りは暴風域に入りそうだけど、その後台湾とかの方向に逸れるように言っていたし、事実今の季節に台風の本土上陸なんて聞いた事が無い
「温暖化の影響で、地脈の流れに変化が起きている・・・風水的にも占星術的にも、確実に来ると出ている!」
「はぁ・・・」

この店長、極めて無愛想で偏屈でマニアックで頑固な上に意固地と言う、この世で最も客商売に向いていない性格にもかかわらず、「釣魔栗堂」というFF専門店を経営している
客を平気で怒鳴りつけ、店から追い出すような商売をしているくせに、何故か経営が成り立っているのは異常なほどのマニアックな品揃えと、それを欲しがるマニアックな常連客のおかげ・・・それと・・・
通信販売のオカルトグッズの売り上げによるところも大きい
実は、FFの達人であると同時に、風水や陰陽道に精通し、黒魔術にも造詣が深いというもっぱらの噂だ
勿論私は、それが単なる噂では無い事は知っている・・・なんせ「魚の幽霊蒐集」が趣味なんだから!!
台風の進路を予想できた所で、今更驚くには値しない

幻想・川蜻蛉 番外編「隠れ滝の無斑岩魚」前篇
「今すぐ用意しろ!今夜のうちに出発するぞ!!」
「いや・・・だって、全然話が見えないですよ、明日は会社ですし」
有給休暇が無い訳ではないが、明日いきなりと言う訳にもいかないだろ普通
「休め!明日は木曜だから2日間休みを取れば良い、4日間あれば充分だ」
「それに嫁にも許可を・・・」
今週の土曜にはネズミの国、某ランドへ行く約束を「させられている」・・・どう考えても許可が出る訳が無いじゃないか!?
「良いか!『あの場所』は、雪代が完全に治まってから、草木が生い茂るまでのほんの僅かな期間しか釣が出来ない・・・と言うか辿り着けないんだ!しかも台風が来て一度地盤が緩んだら、2週間は登れない・・・即ち、今しか無い!!」
あの場所と言うのがどこなのか、説明無しでは判る訳が無いが、この店長がココまで言う場所・・・とてつもなく素敵な場所である事は想像に難くない・・・が・・・しかし・・・
「もしかすると・・・釣りが出来るのは今年が最後かも知れないんだぞ・・・今しか無い上、本当に最後のチャンスなんだぞ!」
多分、行かなければ一生後悔する事になる・・・そんな予感がする、しかしそれ以上に行ったら一生後悔することになる・・・こちらは確信に近い物がある(笑)
「あの・・・どういう場所なんですか?場所も判らないようでは、嫁からの許可がもらえる訳が・・・」
「もう良い!時間の無駄だ!!今日の夜11時に準備して店に来い、来ないなら俺一人で行くからな!!!」
店長はそう言い放つと、一方的に電話を切ってしまった・・・

どうするべきか?
嫁と会社・・・二つも障害があるのだ!どう考えたって、答えは決まっているじゃないか!!
問題は嫁の方だな・・・(笑)
会社には嫁がインフルエンザにかかったと電話をした
「まさか釣りじゃないだろうな?」とイキナリ図星を突かれたが、課長もまさか独身時代のようなアホな真似を私がするとは思っていないようで(甘い、甘いよ課長・・・)、そう忙しい時期では無いせいだろうか?拍子抜けするくらいアッサリと休みの許可が出た・・・
ん?メールが入っている・・・店長からだ
『援護射撃をしておく、会社の方は何とかなるはずだ!嫁のほうは知らん・・・』
店長・・・何をしたんですか!?聞きたいけれど、聞くのが怖い・・・(;^^A
やはり問題は嫁の方か・・・しかし店長の怪しげな術(?)でどうにもならない事を、一体どうすれば・・・
・・・実は方法が一つ・・・あることはある・・・
しかし・・・やるのか?、本当にやるしかないのか?
とてつもなく危険なあの方法を・・・

PM11時
釣魔栗堂の前では、店長が一人溜息をついていた・・・
「まぁ、仕方がないさ・・・いくらなんでも無理なものは無理か・・・」
寂しそうにタバコを咥え、いつもなら時間丁度に、待つ事など考えもせずに出発してしまうのだが
このタバコを吸い終わるくらいまでは待ってみるか?、などと珍しい事を考えていると
「ス、スイマセ~ン!!良かったまだ居たんですか?」
息を切らせて、いつものマヌケな顔が姿を現した!つい笑顔が出てしまいそうになったが、慌てて口元をへの字に曲げて、いつものようにギロリと睨みつける
「なんだ・・・来たのか」
「いやぁ10分も遅れたんで、行っちゃったかと思いましたよ」
「何だって!ん・・・?時計が遅れているようだな、運の良い奴だ!、ちょうど出発する所だったよ」
店長の時計は電波時計・・・1万年に1秒も遅れる事がないはずだが・・・知らない事にしておこう♪
「で・・・どうしたんだ嫁の方は」
「そりゃあ、どうしようもないですよ?」
「だから、どうやって誤魔化してきたんだと聞いているんだ」
「だから・・・どうしようもないから・・・メモを置いて、黙って来ちゃいましたよ♪ハハッハハハ・・・ハハ・・・ハァ」
もはやこれしか無いじゃないか、帰って来た時タダで済むとは思わないが、そんな事は帰って来てから考えれば良いのさ!!
「フン!どうなっても知らんぞ!!だがまぁ、お前にしては上出来だな・・・一応褒めておこうか」
珍しく店長からお褒めの言葉をもらった、遅れてきたのに妙に上機嫌に見える
こうなったら、後は野となれ山となれだ!!(ヤケクソ)

例によって店長の車「エルグランド」に荷物を詰め込んで、運転席へ!さぁ一路・・・どこに行くんだっけ?(笑)
「カーナビがセットしてある、その通りに行け!」
すでに助手席で眠る気満々の店長、いつもならそれで良いんだけど、今回はそう言う訳にもいかない
なんせ今ならまだ戻れるんだから!!
「店長、せめて何を釣りに行くのかくらい教えてくださいよ!ココまでやらせておいて目的地まで秘密と言うのはいくらなんでも酷ですよ」
この店長がココまで私に無理をさせてまで行こうとする場所だ、無理をするだけの価値があることは判っているのだが・・・どうしても気になる!ワクワク感を限界まで高めておかないと、憂鬱な気分が否応無しに襲い掛かってくるのだから
「うん・・・ムハンイワナだ」
「え?・・・だって・・・確かにまだ釣っていないですし、釣りたく無い訳じゃないですけれど・・・」
そう、すでに場所の情報は掴んでいる、大変な場所ではあるが「二度と行けない」「二度と釣れない」と言う程ではない・・・実際秋になったら行くつもりで、今から嫁に根回しをすれば充分可能なターゲットのはず・・・なのだが
「そことは違うんだ・・・今回は魚じゃない、場所が面白いんだ」
店長がニヤリと笑った
「お前が行くつもりの場所、ムハンイワナが釣れる確立がどの程度か知っているか?」
「ええ、1/50って聞いてますけれど」
「そうだ、だがもしも・・・1/4近い確率でムハンイワナが釣れる沢があるとしたら、どうする?」
「まさか!?・・・全てのイワナの共通の先祖にムハンイワナがいなければ、そんな事は起きないはずでしょ?」
遺伝に詳しい方なら判ってもらえるかも知れませんが・・・そう言う事なんです(詳しい考察は、この釣行記を書き終えてからにしましょう)

「A県のB沢上流にある、『不動の連爆』は知っているな?」
「ええ、一度一緒に滝の下まで釣り上がったじゃないですか♪相当きつかったですよね!確か6段の連続した滝で、完全な『魚留め』になっているんですよね?」
滝の上流に放流する「移しイワナ」が割りとどこの沢でもされているのだが、この滝の上流には本当に魚が居ない!
この店長が3日間泊り込みで探っても、影も形も見えなかったらしいから、まず間違いないだろう

「実は、7段目が有ったんだ・・・」
「どう言う事ですか?」
「3段目と4段目の間に、生い茂る木によって隠されたもう一つの滝があったんだ・・・3.5段目の滝いや本当の3段目になるのかな?、「不動隠れ滝」と取り敢えず名付けたんだが・・・」
何だか興奮してきた・・・
つまり3段目と3.5段目『不動隠れ滝』の間にある流れは、まだ誰にも発見されていないと言う事で、そこに「ムハンイワナ」が生息しているらしい
図解するとこういうことだ
幻想・川蜻蛉 番外編「隠れ滝の無斑岩魚」前篇

「それにしても、よく発見できましたね!」
「いや・・・帽子を落として、回収しようと思った時に偶然、な」
こう言う事だ
去年店長は6段ある滝の内、本当の魚留が何段目なのか探るために、山登りの人が開拓したルートを通って1段ずつ高巻をして釣り上ったそうだ
4段目の滝までは魚が居ることを確認した、3.5段目(今まで3段目と思われていた)の滝には魚がいなかった
通常ならばここで4段目が魚留という結論になってもおかしくは無いのだが・・・
「途中で温泉水の流れ込みを見つけてな、ここの水質だけがやたらと悪かったんだ、もし上から魚が落ちてきてもこの段では生息できないのかもしれないと考えたんだ」
「でも、それならば上にも登れないはずでしょ?」
「魚が遡上した後で滝ができて、温泉水の湧き出しが出来たとすれば、上にいる可能性は0ではないと考えた訳さ」
まぁ事実魚がいた訳だから、店長の推理は当たっているんだろう
そして3.5段目を高巻をして上の段に上り滝壺を撮影しようと下を覗き込んだ時に、帽子を落としてしまった
大切な帽子なので、一端下に戻ったが帽子がない・・・
諦めてもう一度高巻をすると、滝壷付近にに帽子が落ちているのが見えた
「それで、下から見ていた3段目の滝と、上から見える3段目の滝が、実は違う滝だという事に気がついたんですね!」
「そういう事だ、で、2段目以降の滝壺までには魚がいなかった・・・即ち3段目か、3.5段目の滝が魚留ということになるが」
話が見えてきた!確かにこれは物凄い発見だ!!
「もし3段目の滝が真の魚留だとすれば、そこから3.5段目の滝までは、今まで人が入ったことのない未知のポイントと言う事になる」
「そこが・・・ムハンイワナの生息地だったんですか・・・」
幻想・川蜻蛉 番外編「隠れ滝の無斑岩魚」前篇
不思議なことに、今までにそこの滝の下流部で、ムハンイワナが釣れたという情報はない
店長曰く、3.5段目の滝から落ちた時に温泉水で全て死んでしまうのだろう・・・とのことだ
「それにしても良く辿り着けましたね!山屋さんのルートにも無かったんですから」
すると店長は、さも愉快そうにニヤリと笑った
「行けば判る、今の時期しか行くことが出来ないって言う理由もな♪」
店長はそこまで言うと、あっという間に寝息を立ててしまった・・・
少々嫌な予感がしたが・・・それ以上に期待感が高まっていった
未知のポイントへの高揚感で、帰った時の起こるであろう修羅場のことを、しばし忘れて深夜の高速道路をひた走っていた

後編に続く

Kawatombo Ken


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この記事へのコメント
オホホ~
相変わらず楽しい文章やね

後編に期待!
Posted by SAGE愛好会 at 2009年10月26日 22:25
こ、この店長、
とんでもなくひどいやつですね、
オイラは帰った時の嫁さんへの言い訳が今から心配です。
Posted by CREEK WALKERS at 2009年10月27日 20:12
帰った後に嫁の荷物が無かったら一番怖い((゚Д゚ll))
Posted by ひで at 2009年10月28日 06:52
うちだったら嫁の荷物・・・無いな~子供も一緒に無いな~

釣り道具・・・燃やされてるな~。
Posted by むつみ屋 at 2009年10月28日 21:12
ん~私は結婚した当初から
はぐれ雲だったので・・・・・
  
今ではすっかり
亭主元気で留守が良い!
  
明日も今シーズン最後の渓流釣行!
アポ無し許可無しでェ
   
その分釣行の無い休日は
嫁さん孝行ですけどね、
  
さて、今後の展開が楽しみです。
  
Posted by メタボおやじ at 2009年10月28日 22:51
SAGE愛好会さん、こんにちは!

後編では、ついにこの滝の謎が明らかになりますよ!!
今執筆中です♪
乞うご期待!!
Posted by Kawatombo Ken at 2009年10月29日 14:45
CREEK WALKERSさん、こんにちは!

いやぁ~、リアル釣行の時も帰ってきてから散々嫌味を言われましたよ!
こんな事なら此方の釣行にも連れて行けば良かったです・・・

虫が多いから嫌だ!って言っていたのに・・・(笑)
Posted by Kawatombo Ken at 2009年10月29日 14:47
実際の釣行でも、似たような状況でした・・・(大笑)

>荷物が無かったら
マジで心配していましたよ(;^^A

ご機嫌は最悪でしたが、嫌味を言われただけなので・・・まぁ良しですかね!
Posted by Kawatombo Ken at 2009年10月29日 14:49
むつみ屋さん、こんにちは!

弟は竿を折られた事があるそうな・・・
シャロムのオフ会では冗談になっていましたが、闘猛はあれ以降トラウマになっているみたいですよ・・・(笑)

そんな事にならないように日々徳を積んでいるんです(;^^A
Posted by Kawatombo Ken at 2009年10月29日 14:52
メタボおやじさん、こんにちは!

それは理解ある奥さんですね!!羨ましいです(^^)b
今度ぜひ教育のコツを伝授してくださいね!(笑)

果たしてフィクションの方ではどう切り抜けるんでしょうかねぇ~♪
Posted by Kawatombo Ken at 2009年10月29日 14:54
こんばんは

久しぶりに楽しいはらはら展開(奥様)・・

むはん・・さて釣れたのでしょうかね~
楽しみです

では 又。
Posted by type r tata at 2009年10月29日 18:00
type r tataさん、こんばんは!
返信遅くなりまして・・・

後編、ようやっとアップできましたよ!
思いのほか長くなってしまって(;^^A

ハラハラ展開の結末まで入れたんで、相当な長さになってしまいました・・・
お暇な時にでも読んでみてください
Posted by Kawatombo KenKawatombo Ken at 2009年11月03日 22:58
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