謎の稚魚の正体は??

Kawatombo Ken

2010年07月21日 22:10

先日行った東北遠征で、カメクライワナが生息していると言われている沢に探索に行ったのですが、ここで釣れた正体不明の稚魚・・・

釣り上げて写真を撮って拡大しじっくり観察した私は
「カメクライワナ」の稚魚である!!
と思い、特殊斑紋探索の大先輩であるCREEK WALKERSさんに、意気揚々&自信満々で報告をしたのですが
曰く「カメクライワナではない可能性のほうが高い」
と言う見解でした・・・(;^^A

で、ここで生じた新たなる疑問
『じゃあ、この稚魚は一体何??』
今回はこれについて検証してみたいと思います。

まず、前提条件は
・放流実績の無い沢である。
・ヤマメ、アマゴの生息は確認されていない。
・アメマス系イワナの生息圏である。

以上の事から、少なくともこの沢の「ネイティブイワナ」である事はほぼ確定しています。

実際はこんなに小さいです(;^^A

そして次に考えなくてはならない事は「カメクライワナってどんな魚?」と言う事です。
http://www.eonet.ne.jp/~stonechar/newpage101.html
http://www.geocities.jp/osakanasan_112/kamekuraiwana.htm
あくまでも成魚に関するものですが、この二つのHPに載っている写真から判る特徴や、一般的に言われている特徴は
1.背中及び側面の斑紋が「唐草模様状」になっている。(側面の模様が薄い個体も居るようです)
2.側面にパーマークは無い。
3.背中・側面に白点(朱点、橙点も同様)は基本的には無いが、側面にごく薄く白点のある個体も居る。

そしてもう一つ重要な事は
4.カメクライワナには中間型はいない。

で、私が釣った稚魚の特徴を、これに照らし合わせてみると・・・
1.背中には唐草模様っぽい模様があるが、成魚の斑紋と同じかと言うと・・・微妙?

2.側面にパーマークがハッキリと存在する。

3.側面に薄い白点が存在する。



この二つを踏まえた上で、まずは私が当初考えていた事は
1.誰が何と言おうと、これは唐草模様だ!(笑)

2.パーマークは稚魚の時には非常にハッキリしているが、成魚になると消えてしまうイワナも多いので、きっと大きくなったら消えてしまうに違いない。

3.白点の存在する個体も確認されているから、白点の有無は判定の材料にはならない。

以上のことから、これは「カメクライワナの稚魚」である可能性が高い。


それに対してCREEK WALKERSさんの見解は
1.稚魚の斑紋は、成長の過程において多種多様なものが現れる可能性があり、稚魚の斑紋で個体の識別をするのは困難である。
→これには思い当たる節があります・・・
日本海側に流出しているニッコウイワナの生息河川の上流部で、ヤマトイワナっぽい稚魚を釣りまして
その写真を自慢げにCREEK WALKERSさんに報告したところ、今回と全く同じ事を言われて頭を抱えた事があります(汗)
その稚魚は背中に白点があったんで、今見れば完全にニッコウイワナだと判るのですが、側面の斑紋がまさに「ヤマトイワナ」っぽかったんです。
とあるHPに掲載されている養魚場のニッコウイワナの稚魚の背中が、白点の無い黄金色になっている写真も紹介していただきました。

2.カメクライワナにパーマークは存在しない。
→以前聞いた話が混ざりますが、カメクライワナやナガレモンイワナの場合、白点及びパーマークを作り出す遺伝子に異常が見られ、その色や境界がハッキリせずに「流れ紋」や「唐草模様」を作り出している。
私なりにこう解釈しました。
さらに考えを進めると・・・
パーマークは側面の「唐草模様」として現われ、パーマークが退化した個体は側面に「唐草模様が無い・薄い」と言う斑紋になる。
つまりパーマークが現れた時点で、カメクライワナでは無いと言える。
と言うことなんだと思います。
(今回の話と以前に聞いた話、そして私の調べた内容などを照らし合わせて、このように解釈させていただきました。)

更に言えば、CREEK WALKERSさんは成魚のカメクライワナの実物を見た事がありますが、私はありません。

・・・
・・・

困った・・・反論が出来ない・・・(;^^A
パーマークの有無が決定的なようです。
やはり、カメクライワナでは無く、この沢の普通種のアメマス系イワナの稚魚・・・と考えるべきなんでしょうね・・・残念。
比較対象のために、他の稚魚も釣ってみたかったんですが、#20のフライをもってしてもこの1匹以外釣れなかったのも痛恨でしたね。(更に言えば、同水系の他の沢の稚魚も比較したかったです。)
これは次回釣行の課題の一つとしておきましょう!

痛恨の極みですが、結論を出しましょう!
この魚は、アメマスの稚魚でした・・・チャンチャン♪


さて結論は出ましたが、もう少し考察(悪足掻き)をしてみましょう。

私はココ最近は特殊斑紋を追いかけており、その前はヤマトイワナに拘っていました。
その関係から源流部に入渓し小さめのフライを使い、小さな魚も釣れるようにしており、稚魚でも斑紋をじっくり観察することは多かったのですが
それなのに、こんな斑紋の稚魚は今まで見た事が無いです。
ニッコウ系イワナの稚魚に限って言えば、その斑紋には大きく2系統あるような気がします。
①完全にニッコウ系の斑紋
②ヤマトイワナっぽい斑紋

ココからは私の推論が多くなるのですが・・・
まずは聞いた話
『脊椎動物においては、受精卵が分裂し体の部分が作り出されていく過程で、今までの進化の軌跡を辿っていく。』
→人間の胎児も、初期においては魚や爬虫類と区別が付かないような形状をしており、成長していくにつれ人間らしくなっていく・・・と言う事です。
『ニッコウイワナは、ヤマトイワナとゴギが交雑した中間雑種がルーツである。』
→この説が正しいのかどうかは判りませんが、正しいとすれば全てのニッコウイワナはヤマトイワナの遺伝子を受け継いでいる。と言う事になりますよね?

そこから仮説を立ててみました。
もしかしたらイワナは稚魚から成魚になる過程で、一時期自分の先祖が持っていた斑紋の特徴を現すことがあるのでは?
そのように考える事は出来ないでしょうか?
即ち
「ヤマトっぽいニッコウイワナの稚魚がいるのは、その先祖にヤマトイワナがいるから」
そして今回の場合は
「カメクラっぽいアメマスの稚魚は、その先祖にカメクライワナがいる。」
更に進んで
「この稚魚はカメクライワナの遺伝子を持っている(子供にカメクライワナが生まれる可能性がある)。」
・・・かなり強引にこんな風に考察(もはや妄想)してみましたが、いかがでしょうか?

う~ん・・・
稚魚1匹で、随分と妄想の翼を広げてしまいました(;^^A
やはりイワナは面白い!!

Kawatombo Ken

PS.
今回の稚魚の斑紋の話ですが、報告しているときに過去に執筆した「幻想川蜻蛉」を思い出しました。
「蒐集品の沢(前編)」なんですが、この物語の中で主人公が特殊斑紋の稚魚を釣り上げ、釣魔栗堂の店主がその写真に興味を持つシーンがあるんです。
カメクライワナの稚魚の写真って、実は物凄く貴重なんじゃないか!?ひょっとしたら俺、凄い事しちゃった??
正直なところこんな風に思っていました・・・(大笑)

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