2007年09月05日
幻想・川蜻蛉 第参話「菱形の斑紋」
山奥に釣りに行くと、たまに不思議な体験をする。
B川・・・フライフィッシングのメッカと言っても良いK川の支流であるこの川は、前々から気になる川の一つでした。
K川には、あれほどの量の魚が放流されているわけだから、その支流であるB川にも当然魚が居るはず!と私は考えていたのだ。
事実、最近でこそあまり耳にしないが、10年位前まではヤマメの好ポイントととして、数々の雑誌や本に紹介されていた。
そんな訳で、恐らく今はあまり訪れる釣人も居ないであろう「穴場的なポイント」になっているのでは?と、このB川に釣りに行く事にした理由はこんな所だ。

しかし、少々甘く見ていたようだ!
地図上で一番B川に入渓しやすそうな場所を選んだつもりだったが、川沿いには出られるものの切り立った崖が多く、もう30分以上も川沿いの山中をさ迷い歩いている・・・
しかし、入渓の困難さは逆に穴場である確立を高めてくれているようなもので、川を前にして釣りが出来ないイラツキと共に、この川に潜むまだ見ぬ大物への期待もいやがうえにも高まって行くのだった!
結局1時間近くうろうろして、ようやっと川原へと下りられる場所を見付けた。幸いこの場所からは道路が見える。退渓ポイントが見付からなくても、最悪ここに戻ってくれば帰ることが出来そうだ。
B川・・・フライフィッシングのメッカと言っても良いK川の支流であるこの川は、前々から気になる川の一つでした。
K川には、あれほどの量の魚が放流されているわけだから、その支流であるB川にも当然魚が居るはず!と私は考えていたのだ。
事実、最近でこそあまり耳にしないが、10年位前まではヤマメの好ポイントととして、数々の雑誌や本に紹介されていた。
そんな訳で、恐らく今はあまり訪れる釣人も居ないであろう「穴場的なポイント」になっているのでは?と、このB川に釣りに行く事にした理由はこんな所だ。
しかし、少々甘く見ていたようだ!
地図上で一番B川に入渓しやすそうな場所を選んだつもりだったが、川沿いには出られるものの切り立った崖が多く、もう30分以上も川沿いの山中をさ迷い歩いている・・・
しかし、入渓の困難さは逆に穴場である確立を高めてくれているようなもので、川を前にして釣りが出来ないイラツキと共に、この川に潜むまだ見ぬ大物への期待もいやがうえにも高まって行くのだった!
結局1時間近くうろうろして、ようやっと川原へと下りられる場所を見付けた。幸いこの場所からは道路が見える。退渓ポイントが見付からなくても、最悪ここに戻ってくれば帰ることが出来そうだ。
そんなことより、もう待ちきれない!渓相は抜群に良い。しかも先ほどからトビゲラと思われる羽虫がそこらじゅうを飛び回っている。逸る気持ちを押さえながら、タックルをセット。使うフライは得意のエルクヘアカディス!
入渓点のすぐ上流にある「いかにも!」という緩やかな流れの瀬から釣りを開始した。

しかし・・・釣れない・・・・
これほどの渓相、無数のカディスのハッチ、先行者の気配無し、これで釣れないのは私の腕が悪いのか、魚が居ないのか、のどちらかしか有り得ない。私程度の腕だと、これは悩みどころで、なかなか諦めが付かない。
もう少し上手な人であれば、「ここには魚は居ない!」と見切ることもできるのでしょうが、私の場合「これ程の渓に魚が居ない訳が無い!」という考えをどうしても捨てることが出来ずに、どんどん先へと遡上して行ってしまったのだった。

1匹の魚も見ることなく、ずいぶん奥まで来てしまった・・・川幅は狭くなり、水量も少なくなってきた。何より藪がひどくなり、釣りにくいことこの上ない。そろそろ帰るルートも考えなくてはならないが、川原を下って引き返すにはあまりにも上流まで来てしまったようだ。(何より面倒くさい)
もう少しだけ道に上がるルートを探してみようと、更に上流へと歩みを進めると・・・
急に川が開け、周囲が明るくなった。
川沿いには小さな畑があり、古い民家が1軒建っていた。
きっとこの辺りからなら、道へ出られるに違いない。ひとまずホッと胸を撫で下ろしていると、
「釣りかい?」
と声がした方を見ると、農作業中のおばあさんだった。
「ええ、そうなんです。」
「ずいぶんと奥まで来たねぇ、この辺魚居ないだろ?」
「そうですね、ぜんぜんダメですよ・・・」
「昔はヤマメが沢山居たんだけどねぇ、最近じゃあほとんど見なくなっちゃったんだよ」
「そうなんですか、やっぱりなぁ・・・。」
「とにかく、お茶でも飲んで行きなさいな」
おばあさんに、お茶をご馳走になって少々休憩。不覚にも二時間程うとうと眠ってしまった。
気付くと辺りが薄暗くなっていた。
しまったとは思ったが、ここからならそう時間は掛からずに車まで戻れるだろう。
「あら、まだ居たのかい?」畑に戻っていたおばあさんに、入渓した場所を説明して帰り道を尋ねると。
「あんた、山一つ越えちゃったんだよ。」
「えっ!?」
どうも、川沿いの道は途中で大きくカーブしており、この場所から出られる道とは直接つながっていないようだ。
帰るには、川を引き返すか、山を迂回して元の道に出るしかないようだ。いずれにしても日が暮れてしまう・・・
「悪かったねぇ、引き止めたりして。」
「いや、眠っちゃった私が悪いんですから。まぁ、懐中電灯は持ってますし・・・」
「この辺は熊も出るし、夜道は危ないよ。今日は家に泊まっていきな」
「でも、申し訳ないですよ・・・」
「なぁに、気にすることないよ。娘と2人暮らしだし、部屋はあるから泊っていきな」
確かに、そうした方が良さそうだ。赤く染まった空を見て思った。このおばあさんの娘なら、年増もいい所だろう(失礼!)、間違いを起こす危険性は無い!
・・・お言葉に甘えてしまうことにした。

釣道具をしまい、ウェーダーを脱ぐと、脱力感にほっとする。今日は下に普通のズボンを履いて来て良かった(タイツだったらと思うと・・・)
家に上がって、くつろいでいると
「ただいまぁ、あら!お客さん?」話に有った娘さんが帰ってきたようだ。おばあさんが、私のことを説明している声がする。
「どうも、大変でしたねぇ」襖が開き、娘さんが入ってきた。
「スイマセン、お世話になります」と、頭を下げて顔を合わせると・・・思ったより若い。30台半ば位だろうか?
何より、こんな山奥の農家に似つかわしくないスッキリとした顔立ちのなかなかの美人だ!
・・・
・・・
食事を頂きながら、何てことない世間話。
どうも以前は娘夫婦と4人でここで農業をやっていたが、相次いでおじいさんと旦那さんを亡くしまい、今ではここで2人で暮らしているようだった。子供の姿が見なかったので、あえて余計なことは聞かなかった(まぁ、エチケットだろう)。
食事は、質素ながらも実に美味しく、暖かかった。
「歓迎されてるなぁ・・・こんな所での二人暮し、寂しいのかね?」
一番風呂まで、頂いてしまって(背中を流しに現れたのが、おばあさんの方だったのは残念だったが・・・)、すっかりくつろいだ私が、縁台に腰掛けて煙草を吹かしていると。
「一本つけたんで、いかがですか?」お盆に乗せて熱燗を持ってきたのは娘さん(Y子さん)だった。
晩夏とは言え、この辺りは夜は結構冷え込むんで、熱燗も良いかも知れない。
差し向かいでお猪口を傾けながら、一日歩いて筋肉痛気味のひざを揉んでいると、
「あらっ、その足どうしました?川原で転んだんですか?」
「いや、これは生まれつきある『あざ』なんですよ。北海道みたいな形でしょ?」
「本当ですね♪なんだか地図みたいですね」
私の足には生まれつき「あざ」がある。その形は菱形と言うより北海道のように見えるのだ。
「実は・・・これは宝の地図なんです。(笑)」
お互いほろ酔いになってくると、この程度のくだらない話でも笑いが出てくる。
Y子さんも風呂上りだからなのか、お酒のせいなのか、ほんのり染まった肌が妙に艶かしく綺麗だった・・・
私を見つめる瞳が潤んでいる・・・
・・・
・・・
・・・
この後何が有ったかは、敢えてここでは語らないが、察してください(笑)
片や独身チョンガー、片や未亡人、道義的に何か問題があるわけでは無いし・・・まぁ、そういうことだ。
翌朝、朝ご飯を頂いた後、山を迂回する道までY子さんに送ってもらった。
お互い昨夜のことがあるせいか終始無言だったのだが、それはそれで何か良い感じだった。
「また・・・来てもいいですか?」
私がそう尋ねると、
Y子さんは軽く微笑むだけで、頷くことも首を振ることもしなかった。

すぐにでも「この間のお礼です!」とか言って、菓子折りの一つもぶら下げて行こう!なんて思ってはいたんだが。
しかしこの後すぐに転勤が決まり、「せめて住所か電話番号くらい聞いておくんだった・・・」という後悔とともに、瞬く間に2年が過ぎてしまった。
お盆休みで久しぶりに実家に戻った私は、もうチャンスは無いなと思いつつもY子さんに、どうしてももう一度会いたくてB川に向かうことにした。(未練がましい奴と笑ってください。)
「釣りのついでに寄りました」と口実にするために釣道具は持ってきていたし、川を見て釣をしないのも何だか物足りないし、何より時間が早い(釣に行くと言って家を出てきたので、現在7時・・・)。
そんな訳で山を迂回する道ではなく、2年前と同じ用に釣り上がって行こう!ということにしたのだ。
幸いに、入渓ポイントには2年前私が結んでおいた赤い布切れが、色褪せてボロボロになりながらも残っていたため、特に迷うことも無くこの間と同じルートをたどることが出来た。

釣れないことは覚悟の上だったのだが・・・
実によく釣れた。大きさこそ20cm程度の中型ばかりだったが、綺麗なヤマメが次々と私のフライへと喰い付いて来た。
楽しかったが、あまり釣りに専念しすぎてしまうと、肝心の目的地に着くことが出来なくなってしまう。
良いポイントのみに絞って、足早に溪を釣りあがっていくと、見覚えのある森の開けた場所に着いた。
「ここだ!間違いない!!」と思ったのだが、
広場は草ぼうぼうで、畑を耕しているようには見えない。
何より家には、人が住んでいるという気配が無い。
「まぁ、2年も経ってるんだしな・・・」
それ程期待していたわけではないが、おばあさんに挨拶くらいはしたかったなと思い、少々気落ちした。
(これは本当、おばあさんにもお世話になった訳だし・・・)
「仕方が無い!せっかく反応は良いんだし、もう少しつ釣りをして行こう。」
この家があった所の前は、水どおしの良い大きなプールになっており、ポイントとしても絶好だ!
こちらは私の期待通り、数箇所でライズをしている。
私はフライをCDCカディスに付け替えて、ライズの数十cm先に落とした。
バシャ!一発だ♪
釣りあがってきたのは、またしても20cmクラスのヤマメ。
先ほどまでは、魚が釣れても『心ここに在らず』だったので、まだ1枚も写真を撮っていない。
ランディングネットにヤマメを入れて、写真を撮ろうと浅い所でヤマメを寝かせた。

「ふ~ん、なんか代わったパーマークの形をしてるんだな・・・」
「なんだ?・・・・これは」
そのヤマメのパーマークは、菱形と言うよりも北海道の形に見えるのだ。
そう、私の足にある『あざ』と同じ形だったのだ!!
「まさか!・・・いや、いくらなんでも・・・なぁ」
その時、どこからか声が聞こえてきた
「お久しぶりですね、あなた・・・おかげさまで子供達は、こんなに大きくなったんですよ・・・」
今思えば、空耳だったのかもしれない・・・
しかし声の方向を見ると、他のヤマメより明らかに一回りは大きいヤマメが悠然と定位していた。
私が近くにいるのに逃げる様子も無く、時折身体をこちらに向けて私のことを見つめているようでもあった。
「Y子さん・・・」
私がそう呼びかけると、そのヤマメは身をくねらせてジャンプをして、深みへと消えていったのだった。

・・・・
・・・・
・・・・
それからどうやって家まで帰ったのか、良く覚えていない。
B川にはこの日を最後に行っていない、おそらく今後も行くことは無いだろう。
しかし毎年夏になり、各地で『渇水』という言葉を聞くようになると、
「子供達は元気だろうか・・・」と、心配だけはしているのだ。
Kawatombo Ken
なんだか、『まんが日本昔ばなし』みたいな展開になってしまいました・・・(;^^A
言うまでもないことですが、今回も「フィクション」です!!
本当です。本当だってば!!!
入渓点のすぐ上流にある「いかにも!」という緩やかな流れの瀬から釣りを開始した。
しかし・・・釣れない・・・・
これほどの渓相、無数のカディスのハッチ、先行者の気配無し、これで釣れないのは私の腕が悪いのか、魚が居ないのか、のどちらかしか有り得ない。私程度の腕だと、これは悩みどころで、なかなか諦めが付かない。
もう少し上手な人であれば、「ここには魚は居ない!」と見切ることもできるのでしょうが、私の場合「これ程の渓に魚が居ない訳が無い!」という考えをどうしても捨てることが出来ずに、どんどん先へと遡上して行ってしまったのだった。
1匹の魚も見ることなく、ずいぶん奥まで来てしまった・・・川幅は狭くなり、水量も少なくなってきた。何より藪がひどくなり、釣りにくいことこの上ない。そろそろ帰るルートも考えなくてはならないが、川原を下って引き返すにはあまりにも上流まで来てしまったようだ。(何より面倒くさい)
もう少しだけ道に上がるルートを探してみようと、更に上流へと歩みを進めると・・・
急に川が開け、周囲が明るくなった。
川沿いには小さな畑があり、古い民家が1軒建っていた。
きっとこの辺りからなら、道へ出られるに違いない。ひとまずホッと胸を撫で下ろしていると、
「釣りかい?」
と声がした方を見ると、農作業中のおばあさんだった。
「ええ、そうなんです。」
「ずいぶんと奥まで来たねぇ、この辺魚居ないだろ?」
「そうですね、ぜんぜんダメですよ・・・」
「昔はヤマメが沢山居たんだけどねぇ、最近じゃあほとんど見なくなっちゃったんだよ」
「そうなんですか、やっぱりなぁ・・・。」
「とにかく、お茶でも飲んで行きなさいな」
おばあさんに、お茶をご馳走になって少々休憩。不覚にも二時間程うとうと眠ってしまった。
気付くと辺りが薄暗くなっていた。
しまったとは思ったが、ここからならそう時間は掛からずに車まで戻れるだろう。
「あら、まだ居たのかい?」畑に戻っていたおばあさんに、入渓した場所を説明して帰り道を尋ねると。
「あんた、山一つ越えちゃったんだよ。」
「えっ!?」
どうも、川沿いの道は途中で大きくカーブしており、この場所から出られる道とは直接つながっていないようだ。
帰るには、川を引き返すか、山を迂回して元の道に出るしかないようだ。いずれにしても日が暮れてしまう・・・
「悪かったねぇ、引き止めたりして。」
「いや、眠っちゃった私が悪いんですから。まぁ、懐中電灯は持ってますし・・・」
「この辺は熊も出るし、夜道は危ないよ。今日は家に泊まっていきな」
「でも、申し訳ないですよ・・・」
「なぁに、気にすることないよ。娘と2人暮らしだし、部屋はあるから泊っていきな」
確かに、そうした方が良さそうだ。赤く染まった空を見て思った。このおばあさんの娘なら、年増もいい所だろう(失礼!)、間違いを起こす危険性は無い!
・・・お言葉に甘えてしまうことにした。
釣道具をしまい、ウェーダーを脱ぐと、脱力感にほっとする。今日は下に普通のズボンを履いて来て良かった(タイツだったらと思うと・・・)
家に上がって、くつろいでいると
「ただいまぁ、あら!お客さん?」話に有った娘さんが帰ってきたようだ。おばあさんが、私のことを説明している声がする。
「どうも、大変でしたねぇ」襖が開き、娘さんが入ってきた。
「スイマセン、お世話になります」と、頭を下げて顔を合わせると・・・思ったより若い。30台半ば位だろうか?
何より、こんな山奥の農家に似つかわしくないスッキリとした顔立ちのなかなかの美人だ!
・・・
・・・
食事を頂きながら、何てことない世間話。
どうも以前は娘夫婦と4人でここで農業をやっていたが、相次いでおじいさんと旦那さんを亡くしまい、今ではここで2人で暮らしているようだった。子供の姿が見なかったので、あえて余計なことは聞かなかった(まぁ、エチケットだろう)。
食事は、質素ながらも実に美味しく、暖かかった。
「歓迎されてるなぁ・・・こんな所での二人暮し、寂しいのかね?」
一番風呂まで、頂いてしまって(背中を流しに現れたのが、おばあさんの方だったのは残念だったが・・・)、すっかりくつろいだ私が、縁台に腰掛けて煙草を吹かしていると。
「一本つけたんで、いかがですか?」お盆に乗せて熱燗を持ってきたのは娘さん(Y子さん)だった。
晩夏とは言え、この辺りは夜は結構冷え込むんで、熱燗も良いかも知れない。
差し向かいでお猪口を傾けながら、一日歩いて筋肉痛気味のひざを揉んでいると、
「あらっ、その足どうしました?川原で転んだんですか?」
「いや、これは生まれつきある『あざ』なんですよ。北海道みたいな形でしょ?」
「本当ですね♪なんだか地図みたいですね」
私の足には生まれつき「あざ」がある。その形は菱形と言うより北海道のように見えるのだ。
「実は・・・これは宝の地図なんです。(笑)」
お互いほろ酔いになってくると、この程度のくだらない話でも笑いが出てくる。
Y子さんも風呂上りだからなのか、お酒のせいなのか、ほんのり染まった肌が妙に艶かしく綺麗だった・・・
私を見つめる瞳が潤んでいる・・・
・・・
・・・
・・・
この後何が有ったかは、敢えてここでは語らないが、察してください(笑)
片や独身チョンガー、片や未亡人、道義的に何か問題があるわけでは無いし・・・まぁ、そういうことだ。
翌朝、朝ご飯を頂いた後、山を迂回する道までY子さんに送ってもらった。
お互い昨夜のことがあるせいか終始無言だったのだが、それはそれで何か良い感じだった。
「また・・・来てもいいですか?」
私がそう尋ねると、
Y子さんは軽く微笑むだけで、頷くことも首を振ることもしなかった。
すぐにでも「この間のお礼です!」とか言って、菓子折りの一つもぶら下げて行こう!なんて思ってはいたんだが。
しかしこの後すぐに転勤が決まり、「せめて住所か電話番号くらい聞いておくんだった・・・」という後悔とともに、瞬く間に2年が過ぎてしまった。
お盆休みで久しぶりに実家に戻った私は、もうチャンスは無いなと思いつつもY子さんに、どうしてももう一度会いたくてB川に向かうことにした。(未練がましい奴と笑ってください。)
「釣りのついでに寄りました」と口実にするために釣道具は持ってきていたし、川を見て釣をしないのも何だか物足りないし、何より時間が早い(釣に行くと言って家を出てきたので、現在7時・・・)。
そんな訳で山を迂回する道ではなく、2年前と同じ用に釣り上がって行こう!ということにしたのだ。
幸いに、入渓ポイントには2年前私が結んでおいた赤い布切れが、色褪せてボロボロになりながらも残っていたため、特に迷うことも無くこの間と同じルートをたどることが出来た。
釣れないことは覚悟の上だったのだが・・・
実によく釣れた。大きさこそ20cm程度の中型ばかりだったが、綺麗なヤマメが次々と私のフライへと喰い付いて来た。
楽しかったが、あまり釣りに専念しすぎてしまうと、肝心の目的地に着くことが出来なくなってしまう。
良いポイントのみに絞って、足早に溪を釣りあがっていくと、見覚えのある森の開けた場所に着いた。
「ここだ!間違いない!!」と思ったのだが、
広場は草ぼうぼうで、畑を耕しているようには見えない。
何より家には、人が住んでいるという気配が無い。
「まぁ、2年も経ってるんだしな・・・」
それ程期待していたわけではないが、おばあさんに挨拶くらいはしたかったなと思い、少々気落ちした。
(これは本当、おばあさんにもお世話になった訳だし・・・)
「仕方が無い!せっかく反応は良いんだし、もう少しつ釣りをして行こう。」
この家があった所の前は、水どおしの良い大きなプールになっており、ポイントとしても絶好だ!
こちらは私の期待通り、数箇所でライズをしている。
私はフライをCDCカディスに付け替えて、ライズの数十cm先に落とした。
バシャ!一発だ♪
釣りあがってきたのは、またしても20cmクラスのヤマメ。
先ほどまでは、魚が釣れても『心ここに在らず』だったので、まだ1枚も写真を撮っていない。
ランディングネットにヤマメを入れて、写真を撮ろうと浅い所でヤマメを寝かせた。
「ふ~ん、なんか代わったパーマークの形をしてるんだな・・・」
「なんだ?・・・・これは」
そのヤマメのパーマークは、菱形と言うよりも北海道の形に見えるのだ。
そう、私の足にある『あざ』と同じ形だったのだ!!
「まさか!・・・いや、いくらなんでも・・・なぁ」
その時、どこからか声が聞こえてきた
「お久しぶりですね、あなた・・・おかげさまで子供達は、こんなに大きくなったんですよ・・・」
今思えば、空耳だったのかもしれない・・・
しかし声の方向を見ると、他のヤマメより明らかに一回りは大きいヤマメが悠然と定位していた。
私が近くにいるのに逃げる様子も無く、時折身体をこちらに向けて私のことを見つめているようでもあった。
「Y子さん・・・」
私がそう呼びかけると、そのヤマメは身をくねらせてジャンプをして、深みへと消えていったのだった。
・・・・
・・・・
・・・・
それからどうやって家まで帰ったのか、良く覚えていない。
B川にはこの日を最後に行っていない、おそらく今後も行くことは無いだろう。
しかし毎年夏になり、各地で『渇水』という言葉を聞くようになると、
「子供達は元気だろうか・・・」と、心配だけはしているのだ。
Kawatombo Ken
なんだか、『まんが日本昔ばなし』みたいな展開になってしまいました・・・(;^^A
言うまでもないことですが、今回も「フィクション」です!!
本当です。本当だってば!!!
Posted by Kawatombo Ken at 01:29│Comments(12)
│短編小説『幻想・川蜻蛉』
この記事へのコメント
こんにちは!
そっか~~~kenさんには沢山の子供がいたんですね^^
楽しく読ませていただきました!物語を書けるなんてすごいですね!実話だから書けるんじゃ・・・?????? 爆
そっか~~~kenさんには沢山の子供がいたんですね^^
楽しく読ませていただきました!物語を書けるなんてすごいですね!実話だから書けるんじゃ・・・?????? 爆
Posted by cool1976 at 2007年09月05日 10:06
こんにちは。
どういう風に纏めるのだろう・・と期待しながら読みました。
良い結末ですね。一気に奥が広がった感じです。
後味もいい気分です。
>本当です。本当だってば!!!
益々怪しいなぁ(笑)
どういう風に纏めるのだろう・・と期待しながら読みました。
良い結末ですね。一気に奥が広がった感じです。
後味もいい気分です。
>本当です。本当だってば!!!
益々怪しいなぁ(笑)
Posted by ken@フライマンの詩 at 2007年09月05日 10:59
すごいですね~
思わず読みきってしまいまいた~
文章の書ける人は尊敬します(^^
思わず読みきってしまいまいた~
文章の書ける人は尊敬します(^^
Posted by hiro at 2007年09月05日 12:39
本当文才ありますよね~
とても面白かったですよ
KENさん同様、どんな結末かと思ってました。
この主人公が、
熊に襲われているヒロインを助けて
胸に傷を負うとか、
この老婆?が包丁を研いでいたとか・・・
本当ベタなネタしか思いつきません
あるプロの方のお話
その方の同級生が、ニジマスの卵に自分のオタマジャクシを振りかけて
孵化してしまって、焦ったとかあせらなかったとか
ほかに聞こえませんでしたか?
「おかえり~パパ~って」
書いていて、KAWATOMBOさんの実話に基づいているのでは?
と勘繰っちゃいますね(笑)
とても面白かったですよ
KENさん同様、どんな結末かと思ってました。
この主人公が、
熊に襲われているヒロインを助けて
胸に傷を負うとか、
この老婆?が包丁を研いでいたとか・・・
本当ベタなネタしか思いつきません
あるプロの方のお話
その方の同級生が、ニジマスの卵に自分のオタマジャクシを振りかけて
孵化してしまって、焦ったとかあせらなかったとか
ほかに聞こえませんでしたか?
「おかえり~パパ~って」
書いていて、KAWATOMBOさんの実話に基づいているのでは?
と勘繰っちゃいますね(笑)
Posted by SAGE愛好会 at 2007年09月05日 12:56
こんにちは
うーん、省略した部分をもっとリアルに・・・(大笑)
でも幻想官能釣り小説になっちゃいますね。(汗)
次回も楽しみにしております。
うーん、省略した部分をもっとリアルに・・・(大笑)
でも幻想官能釣り小説になっちゃいますね。(汗)
次回も楽しみにしております。
Posted by hajihadu at 2007年09月05日 13:10
こんにちは、
毎回楽しく読ませていただいてます。
昔から、ショートストーリーが何より好きです。
次回も楽しみにしていますので、続けてくださいね。
毎回楽しく読ませていただいてます。
昔から、ショートストーリーが何より好きです。
次回も楽しみにしていますので、続けてくださいね。
Posted by jbopper at 2007年09月05日 17:06
cool1976さん、こんばんは!
そうそう、たぶん数百匹は子供が・・・って、違うわ!( ̄□ ̄;)!!
ノリツッコミをしてみました(^O^)
kenさん、どうもです!
そうなんです!今回一番気を使ったのは、どういえ結末にするかなんです。
ギャグやホラーにはしたくないし、余韻を残しつつスッキリ締めたかったので、そう言ってもらえると嬉しいです(o^o^o)
そうそう、たぶん数百匹は子供が・・・って、違うわ!( ̄□ ̄;)!!
ノリツッコミをしてみました(^O^)
kenさん、どうもです!
そうなんです!今回一番気を使ったのは、どういえ結末にするかなんです。
ギャグやホラーにはしたくないし、余韻を残しつつスッキリ締めたかったので、そう言ってもらえると嬉しいです(o^o^o)
Posted by Kwatombo Ken at 2007年09月06日 02:05
hiroさん、いらっしゃいませ!
いえいえ、それ程のものでは無いですよ(;^_^A
でも、楽しんで読んで頂けたなら良かったです!
hiroさんのブログにも、今度伺いますね♪
良かったら、また来てくださいね!
宜しくお願いしますm(__)m
SAGE愛好会さん、毎度どうも!
実際には聞こえたんですよ「おかえり〜パパ〜」って♪
でも、雰囲気が壊れるんで省略したんです。
・・・って、ちぃがぁ〜う!( ̄□ ̄;)!!
いえいえ、それ程のものでは無いですよ(;^_^A
でも、楽しんで読んで頂けたなら良かったです!
hiroさんのブログにも、今度伺いますね♪
良かったら、また来てくださいね!
宜しくお願いしますm(__)m
SAGE愛好会さん、毎度どうも!
実際には聞こえたんですよ「おかえり〜パパ〜」って♪
でも、雰囲気が壊れるんで省略したんです。
・・・って、ちぃがぁ〜う!( ̄□ ̄;)!!
Posted by Kawatombo Ken at 2007年09月06日 02:27
hajihaduさん、こんばんは!
省略した部分ですか?
それはもちろん、二人でトランプをしていたに決まってるじゃ無いですか!
他に何が有ったと言うんですか?(笑)
jbopperさん、いらっしゃいませ!
次回作は構想なんですよ!チョット風変わりなものになりそうです♪
お楽しみに(^.^)b
実は秋川にはたまに行ってるんですよ!
機会があったらご一緒しましょうね(^_-)
省略した部分ですか?
それはもちろん、二人でトランプをしていたに決まってるじゃ無いですか!
他に何が有ったと言うんですか?(笑)
jbopperさん、いらっしゃいませ!
次回作は構想なんですよ!チョット風変わりなものになりそうです♪
お楽しみに(^.^)b
実は秋川にはたまに行ってるんですよ!
機会があったらご一緒しましょうね(^_-)
Posted by Kawatombo Ken at 2007年09月06日 02:51
>>この後何が有ったかは、敢えてここでは語らないが、察してください(笑)
片や独身チョンガー、片や未亡人、道義的に何か問題があるわけでは無いし・・・まぁ、そういうことだ。
この妄想は・・・未来の奥さまには内緒にしときますね♪
妄想でなく ホントの(川蜻蛉 実話)じゃないでしょうけどね♪
しかし セピア色の写真 雰囲気だしてるなぁ(笑)
どんどんコメしちゃいますが めんどくさかったら無視して下さい
モノ好きなんです(失礼・・小説は素晴らしい) (笑)
片や独身チョンガー、片や未亡人、道義的に何か問題があるわけでは無いし・・・まぁ、そういうことだ。
この妄想は・・・未来の奥さまには内緒にしときますね♪
妄想でなく ホントの(川蜻蛉 実話)じゃないでしょうけどね♪
しかし セピア色の写真 雰囲気だしてるなぁ(笑)
どんどんコメしちゃいますが めんどくさかったら無視して下さい
モノ好きなんです(失礼・・小説は素晴らしい) (笑)
Posted by ittoQ
at 2008年10月21日 16:55

・・・・・魚 胎ましたら・・・事件じゃありませんかぁ~(驚)
そう云う落ちは・・・想像してましたぁ(爆)
勿論 生まれた子魚は・・・メガネ掛けてませんよね♪
そう云う落ちは・・・想像してましたぁ(爆)
勿論 生まれた子魚は・・・メガネ掛けてませんよね♪
Posted by ittoQ
at 2008年10月21日 16:57

これは・・奥さまに 内緒にできませんよぉ~♡
心配です KENさんの事が・・・そこまで釣り〇馬菌に冒されてたとは・・。
>>今回も「フィクション」です!!
本当です。本当だってば!!!
妖しい(笑)
心配です KENさんの事が・・・そこまで釣り〇馬菌に冒されてたとは・・。
>>今回も「フィクション」です!!
本当です。本当だってば!!!
妖しい(笑)
Posted by ittoQ
at 2008年10月21日 17:01

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